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春の足音

2001年02月16日(金曜日) 天気:今日の気温:午前6時現在 -28.6度

前衛的芸術作品

(サブタイトル「雪おろしは大嫌い」)

時間は昼休みということにしておこう

いつもの産業課の昼下がり、隣の席の福司さんがポツリと言いました。
「そういえばAさんの家、屋根にママさんダンプが刺さりっぱなしになってるんだよね。」
ママさんダンプは雪国では欠かすことのできない除雪道具。これが家の前に置かれているのは
良く見かけますが、屋根に置きっぱなしとは珍しい。早く行かないと片付けられてしまうかもしれん。
このままのんびりしてはいられない。一刻も早く現場へ向かわなければ。
「係長、ちょっと出かけて来ますね。」
「どこへ?」
「ちょっとそこまです。すぐ戻りますから。」
さすがに「屋根に刺さったママさんダンプ見に行きます!」とは言えません。

春が来るよ

今日は本当に良い天気です。コートにあたる日差しも暖かく、どこからともなく春の足音が聞こえ始めています。

ほんとだ

産業課を出て歩き始めること約2分、Aさんの家の屋根を見上げると、抜けるような青空の下、蛍光色のママさんダンプと除雪用のスコップが2本、しっかりと突き刺さっていました。
「うーん。美しい。まるで何かのオブジェのようだ。」

午後の誘惑

友人の家だったので、無遠慮にその"オブジェ"へずんずん近づいていきました。軒下には、年季の入ったハシゴがかかったままです。その時、ハシゴが言いました。
「のぼってみない?」

鯉のぼりが泳ぐ日を楽しみに

口車に乗り、屋根にのぼってみました。
いつもとはちょっと違った町並みが眼前に広がります。
鯉のぼりの柱の先端にある風車も、勢いよく回り続け、待ち望む春を引き寄せているかのようです。

爽快

「うーん、気持ちいい。」
暖かくてひんやりした空気が頬にあたり気分は爽快。
足下には前衛的な芸術作品?が鎮座しています。

ただ途中でやめただけ

このオブジェにこめられた想い。
そびえる冬山を背景に銀雪に突き刺さる3本の(除雪)道具は、蝦夷地の原生林を切り拓いた先人たちの絶えまざる努力と、大地を耕す農業の尊さを。どこまでも続く青空を背景に、煙突からゆっくりと立ちのぼっていく煙は、高度成長を経て世界有数の先進国となった日本が、どこかに忘れてきてしまった大切なもののありかを指し示している・・・わけないか。
視線を感じ、ふと下を見下ろすと、占冠村保健福祉課長の一条さんが不思議そうにこちらを見上げていました。
「何やってるんですか?」
「いや、ちょっとのぼってみたんです。」
我ながら理由になっていません。

一条さん

「屋根の上にあるママさんダンプが余りにもきれいだったもので、ちょっとのぼってみたんです。」
「あー、あれね。僕もいつ下ろすのかなあと思ってたんですよ。」
人の家の屋根に勝手にのぼっている私を問いつめることもなく、一条さんは静かに役場庁舎内へ消えていきました。