台風15号による災害その2

2001年09月12日(水曜日)

台風15号による災害の様子

途切れた道

午前3時

時間は午前3時。何回目かの見回りに出かけた私たち。
写真は産業課第2班のリーダーである田中親分。
一睡もしていないのに元気です。
先日も元部下の家で朝刊が来るまで飲み続けていたというこのおじさん、鍛え方が違います。

だいぶん減った

「だいぶん減ったなぁ。」
昨日の夕方は写真手前の土嚢から水が溢れていましたが、今は長靴で入っていけるくらいまで水が減っています。
でもこの場所、土嚢の手前も奥もれっきとしたアスファルトの道路なんですよね。
積まれた土嚢のすぐそばに道路のセンターラインがありました。

いずこへ

水路の水が溢れ、芝生の上を流れていく水。この水は何処へ向かうのか。

正解は・・・

上の水は村の野球場に流れ込んでいたのでした。
手前の建物は石灰やライン引きなどを入れておく物置、奥が野球場です。
水がどんどん流れ込み、球場全体が大きな池になっていました。
「おーおーおー、土砂が流れ込んでキャッチャーの方がマウンドより高くなっとるわー。ベンチも水飲み場も埋まっとる。これ、どうやって発掘するんですかねぇ。」
「さあ。」
田中親分直属の部下である五十嵐さん。呆然としています。

楽しかった

午前4時、避難解除の時間が発表されました。
占冠地区は午前7時、千歳・本通り地区は午前8時に避難解除とのこと。
避難場所であった占冠中学校へ後片付けに行った時に聞こえてきた親子の会話。
「みんないっぱいいて楽しかったね。また台風来ないかなぁ。」
「勘弁してよお。」真顔で応えるお母さん。
大人にとっては勘弁して欲しい災害も、新鮮な心を持つ子供にとってはわくわくするような心躍る体験だったのでしょう。
避難所の運営などに多大なるご尽力をいただいたボランティアスタッフや学校の先生、徹夜でポンプアップや土嚢積みに奔走していた消防団員や建設業者の皆様、本当にお疲れ様でした。

被害調査

避難解除の後は、すぐさま被害状況調査に入ります。
田中親分を中心とする産業課第2班は、村内にある林道の被害調査にあたります。
まずは「キヨセノ沢林道」という林道へ。さっそく道が落ちています。

※林道・・・植林や枝打ち・除間伐など主に森林の保安・育成を目的として作られた道路です。

測定

「おーおー、派手に崩れたなあ。よーし、テープ!スタフはいらねえ。」
被害の規模を測定します。

また崩れるかも

「道路欠壊幅員25メートルっと。」
崖っぷちに立って被害状況をメモする田中親分。
気をつけてくださいね。その辺り、まだクラック(亀裂)が残ってます。

落ちたら死にそう

「もう行けませんよね。」
「大丈夫じゃねえか。車の幅は確保されとるぞ。」
強気な親分。
「そうですか?じゃ行きます。」
淡々と車を進める五十嵐さん。
半分ほど残された道路を注意深く通り抜けます。
窓の下はこんな感じ。落ちたら死にそう。

道がない

しばらく行くと、今度は完全に道路が無くなっていました。
「今度はさすがに行けませんね。」
「そうだなぁ、引き返そう。」
遥か遠くに見えるカーブミラーも、しばらくその役割を果たすことは無さそうです。

自然の力

崖下の様子。道路の欠壊を防ぐために設置されていた縦横7メートル位のコンクリート壁も、無惨な姿で倒れています。

鬼峠

場所は変わって今度は「鬼峠線」と呼ばれる林道へやって来ました。
標高は697メートル。鬼峠の頂上からは占冠村を一望することができます。いまだ工事中ではありますが、路線の延長は10キロメートルくらいになる予定です。
村の観光係である担当者は、将来この路線を自然体感ハイキングコースとして売り出そうと目論んでいます。

若鹿もホッと一息

窓の外を見ていると、鹿が1頭ひょこんと出てきました。
車から降りてカメラを向けてもこちらをじーっと見つめたまま。
バンビの模様と袋に包まれたままの短い角。美しい若鹿です。

ひどい

道路を横断する川が出来ています。
被害状況の写真撮影にいそしむ五十嵐さん。
「どうだい?」
「ひどいっす。」
「どれどれ・・・。」

確かに

近づいてのぞき込んでみると、道路の下に埋められていたはずの土管が全てむき出しになり、しかもバラバラになっています。
「うん、確かにひどい。」

行けない

次の調査先は「三角山線」と呼ばれている林道です。
林道に入ってから3分後。土砂崩れで道が塞がれています。
「行けませんね。」
「そうだな。」
言葉少ない上司と部下。
白いヘルメットがかわいい五十嵐さん(写真右)です。

反対側から入ろう

車から降りてみるとこんな感じです。
四輪駆動の車でも乗り越えられそうにありません。
「よし、反対側から入ろう。」
同じ林道の反対側の入り口へと向かいます。

こっちもダメ

反対側の入り口から入ってわずか500メートル。
山から押し流された流木で道が塞がれていました。
「どっちからも行けませんね。」
「そうだな。帰るか。」

頑張ります

昼食をとるために、一度産業課へ戻ることにしました。
役場への道すがら、親分がつぶやいた一言。
「みんな何だかんだと言っても働くよなあ。偉いよ。」
対策本部設置から被害調査や残務整理などで保育所の先生までもがかり出されたこの2日間。みんなぶっ通しで働き続けています。

(写真は、道路を塞いでいるなぎ倒さされた木の裂け目です。)

あの川は今

昨日は川になっていた(下写真)畑も、ようやく畑らしい姿に戻っていました。
「ちょっと奥まで行ってみます。」
あの林の奥の方で静かに流れていたはずの川が、昨日はこの畑の半分以上を飲み込んでいました。
今はどうなっているんだろう?
ちょっと奥まで行ってみることにしました。
昨日の様子

取材魂

奥まで歩いていくと、カラマツ林に引っかかった流木などが山積みになっています。高さは2メートル以上はありそうです。
「ちょっと登ってみます。」
物好きにも、流木の山をよじ登ってみました。

いきなり濁流

「おー!」
流木を乗り越えてみたらそこはいきなり濁流。
「あっぶねぇ。流されたら死んじまう。」

一通りの作業が終わり、家路についたのは午後7時。
36時間ぶりに我が家へ帰れます。
それでは皆様お休みなさい。

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