不法侵入者

1998年12月30日(水曜日) 天気:午前7時の気温-6度

占冠村生活情報センター午前6時50分

ある夜のできごと

12月29日忘年会真っ最中の午後8時過ぎ、近所のおじさんがあわててやってきました。
「三浦さん、大変だ。閉まってる情報センターに男が何人か入ってる。エラそうにタバコまで吸ってる。」
占冠村中央部にある占冠村生活情報センターは、雇用情報や観光情報を提供する場として建設されたものです。開館時間は午前9時から午後6時まで。もちろん宿泊はできません。
「昔の説教強盗じゃあるまいし、泥棒がのんびりタバコなんか吸わないだろう。」と思いつつも何がおこるかわからないのが“しむかっぷ”。とりあえず一緒に飲んでいた山下係長(私の直属の上司です)に「とりあえず行って見て来ます。」と報告したところ、隣で聞いていた役場で“一番熱い男”A氏が名乗りをあげました。
「よし、一緒に行ってやる。俺ウーロン茶しか飲んでないし。交通安全指導車で出動だ!」
皆さん交通安全指導車って見たことありますか。パトライトもつけばサイレンも鳴る、無線もあればスピーカーも完備。パトカーと同じ作りなんです。
「よっしゃ。パトライトつけて行くぞ!サイレンも鳴らすか?」(A氏)
「さすがにサイレンはやめましょう。」(私)
「なんかあったらすぐに無線で尾上さん(占冠の警察署長)呼んでやるから。」(A氏)
・・・現場到着。
なるほど、真っ暗な情報センターの中に若い男が3人ほどうごめいています。
「ここを開けろ!」(私)
「そこ開かないんであっちの入口から入ってもらえます?」(3人組)
問答無用でマスターキーを使って中に入る私。赤石さんは3人が指さした別の入口に仁王立ちになってます。
「誰の許可を受けて中に入ったの?」(私)
「管理人のおばさんの許可を受けました。僕たち外でテントを張って寝ようと思ったんですけど外で寝たら死ぬかもしれない(そりゃそうだ)からなんとか一晩だけ中に入れてもらえないかって頼んだんです。そしたらいいって。ストーブもつけていってくれたんです。」
そこで電話で掃除のおばさんに確認したところ、3人組の言うとおりだと判明しました。ただ手違いがあって情報センターの担当者である私たちに連絡が入っていなかったようです。
「どうします?」(私)
「しょうがないんじゃない?外で寝たら死んじゃうし。」(山下係長)
「うん、しょうがないんじゃないか。」(A氏)
絶対宿泊できない情報センターですが、ここは3人の若者を信用し、見て見ないふりをすることにしました。
「じゃあここに住所と名前と電話番号を書いてもらえる?身元は押さえておかないと(笑)。」
「明日何時に出発するの?」(私)
「朝7時頃です。」(3人組)
「じゃあ、明日7時に鍵を閉めに来るから。明日7時にまた会いましょう。いい夢を。」(私)
・・・こちら3人撤収。酒場へ戻る。 

後悔

夕べ一杯機嫌で「明日朝7時に皆さんの出発に会わせてここに来るから!」と元気良く言ったものの、昨日は忘年会で私の車は役場の前に置きっぱなし。私の家から生活情報センターまでは1.5キロメートル以上あるんです。風雪吹きすさぶ夜明け前、一人寂しく歩いていく私。情報センターはこの道のずっと先、遠くかすんで見える占冠村の中央部にあります。
「俺、何やってんだろ。」と自問自答すること20分。ようやく情報センターに着きました。
 

不法侵入者3名

北海道の厳寒を体感するため、冬の北海道を車で回っている北海道大学サイクリングサークルの藤さん、藤田さん、長井さんの3人です。真の厳寒を極めるべく旅を続ける彼らも、昨日は占冠村で力尽きたようです。何も一番寒いところで力尽きなくてもいいのにねぇ。 

出発

いよいよ出発です。彼らの旅も今日が最終日だそうです。これから一路札幌へ向かう彼ら。今度ススキノで会いましょう。 

またね

 「また来年も来まーす。」
恐ろしく元気な3人。またのお越しをお待ちしております。今度は不法侵入者扱いされないよう祈っています。元気でね。

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